なめし革とは?3種類あるなめし革を革の専門家がわかりやすく解説!

植物タンニンなめしの革の画像

なめし革とは、動物から剥いだ皮を薬剤などを使って加工した革のことです。

動物の皮はそのままだと腐敗が進んで製品としては成り立ちません。

そこでタンニンやクロムといった薬剤を皮に染み込ませて「革」へと加工するのです。

この加工を「なめす(鞣す)」というので「なめし革」と呼ばれています。

なめし革はさらに植物タンニン鞣し革クロム鞣し革混合なめし革の3つに分類されます。

そこで、ここからはなめし革とは一体どういったものなのか詳しく解説して、3種類のなめし革のメリットとデメリットをお伝えします。

読み終えたころにはなめし革についての理解が深まり、あなたがどのなめし革を選べば良いかわかるはずです。

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なめし革とは

なめし革とは動物から剥いだ皮に薬剤などを染み込ませて、より丈夫な「革」へと変化させた革のことです。

動物の皮はそのまま使うと腐敗が進んで乾燥、硬化してしまってとても製品としては使えません。

これは皮のコラーゲン繊維は水の中でしか安定せず、水(動物でいう体液)がなくなると結合が解けて乾燥して硬くなってしまうからです。

その動物の皮にタンニン(植物の渋み成分)やクロム(塩基性酸化物)を染み込ませて、コラーゲン繊維の癒着を防ぎ、革に変えるのが「鞣し」という加工です。

タンニンやクロムで鞣すとコラーゲン繊維が癒着しないので、乾燥せずに皮の柔軟性が保たれるのです。

なめし革は大きく分けて3種類ある

なめし革は先ほどご紹介した「鞣し」の方法によって更に3つに分けられます。

1,植物タンニンなめし革

2,クロムなめし革

3,混合なめし革

それぞれどのような革なのか詳しく解説していきます。

植物タンニンなめし革

植物タンニンなめし革とは、樹木の皮や幹などから抽出したタンニンという成分を使って皮を加工したなめし革のことです。

自然の成分(タンニン)を使っているので、原皮(動物の皮そのもの)へのダメージが少なく傷みにくい丈夫な革が出来上がります。

植物タンニンなめしの革の画像

ただし、このなめし方では完成まで約2カ月かかること、広大な敷地が必要なことから時間とコストがかかります。

それはタンニンを含む溶液がタンニン槽(大きな樽)に入っていて、皮を濃度が薄い槽から濃い槽へと順に漬け込んでタンニンを浸透させるという作業があるからです。

そのため植物タンニンなめし革で作られている革製品は高価なものが多いです。

※なめし方はこれだけではなくもっと工数がありますが、今回は割愛しています。

クロムなめし革

クロムなめし革とは、塩基性硫酸クロムという化学薬品を使って皮を加工したなめし革のことです。

クロムなめし革の画像

機械を使って皮になめし剤(塩基性硫酸クロムが入った溶液)を浸透させるので、なめし処理は1日で終わります

短期間で大量生産できることから、クロムなめし革は植物タンニンなめし革よりも安価なことが多いです。

柔軟性耐久性染色性に優れているので様々な製品に使われています。

混合なめし革

混合なめし革(コンビネーションなめしとも言う)とは植物タンニンなめしとクロムなめしの両工程を行った革のことです。

混合なめし革の画像

両方の良いとこ取りをして、お互いの欠点を補えるなめし方と言えます。

例えば、植物タンニンなめし程エイジングはしないものの、ある程度エイジングをしてクロムなめしの特徴でもある発色も良い革を作ることが可能です。

しかし、各々の良いところ全てを最大限引き出せるわけではないので注意が必要です。

クロムなめしをしてから植物タンニンなめしをするのが一般的で、順序を逆にすると逆コンビなめしとも呼ばれます。

植物タンニンなめし革のメリット・デメリット

ここからは植物タンニンなめし革のメリットとデメリットをご紹介していきます。

今後あなたがどのなめし革を選ぶべきか、メリットとデメリットを比較して決めるときが来るでしょう。

そのときの参考にしてください。

※混合なめし革はここから解説するメリットとデメリットが混合する革なので、紹介を省かせて頂きます。

植物タンニンなめし革のメリット

植物タンニンなめし革の最大のメリットは、エイジング(経年変化)を楽しめることです。

革は使い込んでいくうちに色が変化したり、柔らかくなったりと独自の変化を遂げていきます。

エイジングした画像

この革の色や、柔らかさなどが変化していくことをエイジング(経年変化)と言います。

植物タンニンなめし革は特にエイジングが起きやすく、あなたの使い方によって色も形も変わっていきます。

同じ商品でも使う人によって変化がまったく違うので、あなただけの世界に1つしかない革製品が手に入ると言えるでしょう。

※色艶、柔らかさが変化していくエイジング(経年変化)。エイジングついて知りたい方はこちらの記事へ。
>> 【保存版】革エイジング(経年変化)とは?失敗しない方法とメンテナンス

植物タンニンなめし革のデメリット

植物タンニンなめし革のデメリットは、雨などの水分や汚れに弱いことです。

水分を吸収しやすいので変形してしまったり、シミや汚れのように見えてしまうことがあります。

汚れてしまった画像

革製品の注意書きには「水に濡れたらすぐに拭きとってください」と書かれているほどです。

そのため、水に濡らさないように注意したり定期的なメンテナンスが必要だったりします。

クロムなめし革のメリット・デメリット

次にクロムなめし革のメリットとデメリットをご紹介していきます。

クロムなめし革のメリット

クロムなめし革は頻繁なメンテナンスが必要なく、扱いやすいことがメリットです。

クロムなめし革が水に濡れてる画像

これは、クロムなめし革は傷や水分への耐性に優れているからです。

クロム剤を使うことで皮が柔らかくて伸縮性の高い革になるので、メンテナンスをしなくてもある程度品質が保たれます。

また、クロム剤の影響によりなめしが終わった革は白に近い色になるので、染色するのが簡単です。

そのため、あなた好みの色を見つけやすいでしょう。

クロムなめし革のデメリット

クロムなめし革のデメリットは2つあります。

アレルギー反応が出る場合がある

環境汚染

1つ目のデメリットは人によってアレルギー反応が出ることです。

なめしに使われるクロムは、金属なので金属アレルギーの人は注意が必要と言えます。

2つ目のデメリットは、なめす過程において環境汚染に繋がっていることです。

製品自体が環境汚染に繋がるのではなく、工場で出た重金属を含む排水問題視されています。

工場で勤務している人にも健康被害が見られることから、クロムなめし革は規模が縮小している傾向にあります。

なめし革の種類は自分の使う環境によって決めよう

なめし革の画像

なめし革は大きく分けると3種類ありましたが、どの革を選べば良いのかはあなたの使う環境によって変わります。

つまり、どのなめし革が一番良い!みたいな決め方はできないということです。

例えば、あなたが革靴が欲しいと思っていたとします。

営業職のため歩き回る生活スタイルで、汚れることもしばしば。

このような方が植物タンニンなめしの革靴を買うと、メンテナンスに手間がかかってしまうでしょう。

それなら汚れや傷に強いクロムなめしの革靴のほうが良いかもしれません。

このように各メリットとデメリットを比較して、あなたに合ったなめし革を見つけてください。

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