革好きにとって魅力的な特徴を持つ鹿革は近年幅広く注目を集めており、革としての価値はもちろん、加工される工程も注目される理由のひとつとなっています。
強い繁殖力を持つ鹿は、捕食者の絶滅や人類の土地開発の影響により、数を増やし続けさまざまな社会問題の原因となっています。
現状では狩猟による鹿の個体数調整が実施され、その後の活用方法が問われている状態であり、そのひとつが革製品としての活用です。
本記事では鹿革の特徴や魅力的な鹿革のアイテム、札幌革職人館が行っている取り組みについて紹介します。
一味違った革製品を求めている方にとって興味深い知識やアイテムを紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
鹿革は狩猟された個体の皮
鹿革の原料となる鹿は狩猟された個体であり、主に雌鹿であることが一般的です。
後ほど紹介する革質の良さという理由の他に、繁殖を防ぐという理由で雌鹿が優先的に駆除されていることが影響しています。
鹿の増加により農林業被害や食害による生態系の被害が数多く確認されており、狩猟後の活用法として革製品としての活用が注目されています。
鹿革の特徴
鹿革の以下の特徴について、解説していきます。
- 軽量でしなやかな質感
- 革としての価値が高い
- 独特の経年変化が楽しめる
- 水に強く型崩れしにくい
軽量でしなやかな質感
鹿革は軽量でしなやかな質感という特徴があります。
そのため、縫製が難しく、柔らかすぎる革は縫製時にガタガタになってしまうことも多いため、技術が必要不可欠です。
軽くしなやかでありながら、グリップ力が高く通気性が高いという性質もあることから、航空機のパイロット用手袋の素材として活用されています。
キメ細かく、通気性に優れた面は羊革に近い性質を持っており、水に強くバッグや財布、アパレルにも活用できる高機能な素材です。
また湿度を自動でコントロールしてくれ、湿潤気候である日本の風土にも適しているとも言われています。
※羊革について詳しく知りたい方は、以下のリンクの参考サイトを見てみてください。
参考サイト:羊革(シープスキン)の特徴 |革鞄・革小物のPORCO ROSSO(ポルコロッソ)
革としての価値が高い
皮革業界では革の面積の単位として「デシ(DS)」が利用されており、1デシは「10cm×10cm」という基準となっています。
革の大きさ1デシ当たりの単価が、それぞれの革の種類によって異なります。
以下にまとめました。
革の種類 | 1デシ当たりの単価 |
馬(コードバン) | 600~900円 |
牛 | 高級品:180円~250円 一般的な革:65円~100円 |
鹿 | 100円~120円 |
豚 | 45円~60円 |
山羊 | 60円~70円 |
鹿は1デシ当たり100円~120円となり、一般的な牛革とさほど差がありませんが、鹿の繊細で柔らかな皮は、鞣しの作業が難しく熟練の職人の技術が必要なため、供給量が少なく牛革のように多く出回っていないため、価値が高いと言えます。
独特の経年変化が楽しめる
鹿革は肌触りがよくしっとりとした質感で、柔らかさを保ったまま味わい深いエイジングが楽しめます。
ほとんどお手入れをしなくても硬くならず、状態を保ったままシボ感(シワ)が強くなっていくのが特徴です。
水に強く型崩れしにくい
鹿革は一般的な本革に比べて水に濡れても型崩れしにくく、シミになりにくい性質の革です。
鹿革の繊維構造は「15/10000000mm」という非常に細い繊維と、水分を保持する機能があるコラーゲンが絡まり合ってできています。
鹿革は水に濡れて乾燥しても水分バランスが崩れにくいため、元の形状が保持されやすくシミになりません。
お手入れがほとんどいらないのは、鹿革ならではの繊維構造によるものです。
鹿革は2種類に分かれる
鹿革は「ディアスキン(雌鹿)」と「バックスキン(雄鹿)」で特徴が異なります。
それぞれの革の特徴を次で解説していきます。
ディアスキン
雌鹿の革であるディアスキンは高級繊維であるカシミアに例えられるほどの手触りの良さが特徴です。
ディアスキンの繊維は極細の繊維がコラーゲンと絡み合っている構造になっており、繊維が細いという特徴はカシミアと共通しています。
さらに雌鹿は雄鹿に比べて争うことが少ないため革に傷が少なく、革製品として無駄なく活用しやすいというメリットがあります。
バックスキン
雄鹿の革であるバックスキンはディアスキンに比べると硬く傷が多いため、革の表面(銀面)を削って起毛させているのが特徴です。
鹿革の特徴である軽量でしなやかな点はバックスキンも同様であるため、革としての質の高さはディアスキンに引けを取らないといえます。
鹿革の鞣し方
「鞣し(なめし)」は腐敗を防ぐための処理のことで、鹿革では使用する薬剤の違いによって以下の2種類の鞣し方に分かれます。
- クロム鞣し
- タンニン鞣し
それぞれの特徴について次で解説します。
クロム鞣し
クロム鞣しはクロム化合物といった薬品を使用した手法で、短期間で加工できるのが特徴です。
クロム鞣しの革は可塑性がないため形が馴染むことはなく、経年による色の変化は少ないという性質があります。
タンニン鞣し
タンニン鞣しは植物性のタンニン(渋)を使用した鞣し方で、完成までに時間(1か月程度)と手間がかかるのが特徴です。
タンニン鞣しの革はクロム鞣しの革よりも張りがあるのが特徴で、使うほどに馴染み、経年による色の変化を楽しめるのが特徴です。
鹿革の経年変化を楽しみたい方はタンニン鞣しの製品を選ぶのがおすすめです。
※鞣しについて詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてみてください。
>> なめし革とは?3種類あるなめし革を革の専門家がわかりやすく解説!
おすすめ鹿革アイテム8選
以下のおすすめ鹿革アイテムを紹介していきます。
- 札幌革職人館 エゾシカレザー 6連キーケース
- レザレクション 長財布 鹿革【禄 ROKU】
- 水芭蕉 鹿リュック 大
- レザーハウス 革バイクグローブ(鹿革)
- PARLEY ハンチングハット
- tent-MarkDESIGNS 鹿革グローブ インナー付き
- ENISICA オニシカ・バッグ
- FILLMORE ディアスキンシングルライダースジャケット
札幌革職人館 エゾシカレザー 6連キーケース
お手入れ不要のエゾシカ革を上質なキーケースとして仕上げた商品です。
手になじみやすいしなやかなエゾシカ革に加えて、内張りに牛革を使用することで耐久性をアップさせ、張りも持たせています。
毎日使用するからこそ、こだわった物が欲しいという方におすすめです。
価格:10,340円 (税込)
- 特徴
-
必要最低限の貴重品をまとめて収納できる、6連タイプのキーケース。キーフックの裏にはカード、左側のポケットには4つ折りのお札が収納できます。スマートキーの収納も可能です。
レザレクション ロングウォレット / 鹿革【禄 ROKU】
「お札入れ×2」「小銭入れ×1」「カード入れ×13」が配置された、大容量の長財布です。
エゾシカ革はお手入れ不要で経年変化が楽しめる性質のため、味わい深い革のエイジングを簡単に楽しめます。
素材にこだわり、他の人と被らない財布が欲しい方におすすめのアイテムです。
価格:66,000円
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水芭蕉 鹿リュック 大
鹿革を使用したなめらかな革の質感を活かしたシンプルなリュックです。
ダブルファスナーで開閉しやすく、蒸れを防ぐために背中はメッシュ素材になっているなど機能的に仕上げられています。
価格:85,800円
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レザーハウス 革バイクグローブ(鹿革)
柔らかさと手触りの良さを活かした、バイクグローブです。
操作を邪魔しない柔らかさと、水にも強い性質は過酷な環境のツーリングで機能すること間違いなしです。
価格:7,480円
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PARLEY ハンチングハット
光沢のある鹿革で作られた渋みがあるハンチングハットです。
鹿革の軽量さを活かしており、デイリーユースにピッタリなアイテムになっています。
価格:18,700円
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tent-MarkDESIGNS 鹿革グローブ インナー付き
耐久性のある鹿革で作られた、キャンプ用のグローブです。
水にも強く軽量であり、手になじむためキャンプでのさまざまな作業に使用していても邪魔にならない仕上がりになっています。
価格:6,578円
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ENISICA オニシカ・バッグ
オニシカ・バッグの革表面は少し起毛したヌバック調となっており、雨や汚れから守るための撥水加工が施されています。
男性向けに作られたバッグのため大ぶりのサイズで、鹿二頭分の革が使用された贅沢な仕上がりになっています。
価格:84,700円
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FILLMORE ディアスキンシングルライダースジャケット
贅沢にディアスキンが使用されたシャープなシルエットのシングルライダースジャケットです。
軽量かつ肌触りの良いディアスキンの性質を活かし軽い着心地を実現し、裏地にはシルク100%の生地を使用した高級感あるアイテムになっています。
価格:110,000円
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鹿革のお手入れ方法
鹿革はほとんどお手入れが必要ない革であるため、日々のケアは柔らかい馬毛のブラシで軽くブラッシングする程度で充分です。
長期間放置して乾燥が気になるといった場合でも、染みやすいため革用のクリームは使用しないようにしましょう。
お手入れする際は、手につけたハンドクリームの余りを軽く伸ばす程度で充分です。
水にも強いですがシミになる場合があるため、濡れてしまった場合は拭き取って風通しの良いところで乾燥させてください。
札幌革職人館のエゾシカ共生への取り組み
北海道では、北海道の固有種である大型の鹿「エゾシカ」が繁殖し、農林業の被害や車や列車との接触による交通事故などが問題になっています。
人間社会が確立された現代では、あらゆる場所で自然とのバランスをとるのが難しくなっており、生物の個体数調整を行わざるを得ない状況です。
札幌革職人館では個体数調整により失われた命を無駄にせず、有効に活用するためにエゾシカ革の魅力を活かしたアイテムの制作販売が行われています。
※活動に興味を持った方はエゾシカ革に関して解説した以下の記事をご覧ください。
>> 革好きにおすすめのエゾシカ革の特徴と魅力|注目されるその背景とは
まとめ
革としての価値が高い鹿革には、革製品として適したさまざまな性質があることを紹介してきました。
おすすめアイテムで紹介したように小物からレザージャケットまで、多様なアイテムに利用されているところからも、素材としての有用性の高さが伺えます。
鹿を駆除せざるを得ない社会的背景についても説明しましたが、革製品業界では製品制作と販売を通じて失われた命の活用へ取り組んでいます。
共感できた方は鹿革のアイテムを通じて、この活動に参加してみてください。