緑青(ろくしょう)とは、銅の表面に付着する「サビ」のことで別名「青サビ」と呼ばれ、その名の通り「青緑色」なのが特徴です。
銅製であるアメリカの自由の女神像や鎌倉の大仏の青緑色は緑青によるもので、銅の腐食を防ぎ、建造物の維持に役立つ効果があります。
しかし、銅製の鍋や食器で緑青が発生する場合、清潔感を損なうことからメンテナンス性を悪くし、一般的には銅製品に起きるデメリットとされています。
銅鍋はヨーロッパをはじめ世界中のプロの料理人に愛用されていますが、このサビは人体に影響はないのでしょうか?
また、サビやすい鍋をどのようにメンテナンスして使用しているのでしょうか?
そこで今回は緑青とはどのようなものなのか、その特徴をお伝えし簡単に落とす方法を説明します。
ぜひ、参考にしてみてください。
緑青とは
緑青(ろくしょう)とは銅に発生するサビのことですが、実は人体への害はありません。
緑青は銅や真鍮に発生するものですが、意外に知られていない良い効果があります。
次で詳しく見ていきましょう。
緑青が発生する仕組み
緑青は鉄に発生するサビと同じように、銅に対して発生するサビのことです。
銅に対して水分と酸素、二酸化炭素などが反応し表面に「酸化銅」といわれる赤茶色のサビができます。
そして、赤茶色の酸化銅の上に青緑色のサビの層が重なり緑青ができます。
鉄で起きるような一般的なサビと同じように感じますが、違うところがあります。
緑青は一般的なサビと違い内部を腐食してボロボロにせず、銅の上に膜となり腐食から守る効果があります。
緑青はサビでありながら銅をコーティングするような存在なのです。
緑青は有害ではない
緑青は人体にとって有害ではありません。
昭和後期まで猛毒として扱われていたため誤解されていることが多いですが、人体に対して毒性はなく、安全であることが確認されています。
緑青が発生する銅が使われた鍋やヤカンが普通に売られているように毒性がないことが証明されて一般的に商品化されています。
緑青が発生する物
緑青が発生する物は、銅や銅の合金である真鍮(しんちゅう)などで作られた製品です。
主に銅と真鍮が使われているものを以下にまとめてみました。
銅でできているもの
・10円玉
・給湯器の配管
・銅鍋、ヤカン
真鍮でできているもの
・5円玉
・財布のボタン
・洋服のボタン、留め具
・バッグの金具
上記以外にも多数ありますが、これらの物が緑青が発生しやすい物です。
よく見かけるものでは、古い10円玉や5円玉が青く錆びているのを見たことはないでしょうか。
また、寺社仏閣の屋根や歴史的建造物のなかに緑青が発生し青みがかった物が多数あります。
銅や真鍮は加工しやすく見た目もよいため、身近なところに使用されています。
※真鍮について詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてみてください。
>> 真鍮とは銅と亜鉛の合金のこと!真鍮の特徴やデメリットを徹底解説!
緑青のメリット
緑青の特徴を紹介してきましたが、緑青はどのような点で役立てられているのか。
そのメリットについて説明していきます。
緑青で腐食が防げる
緑青が銅の表面をコーティングすることで、内部の腐食を防ぎ耐久性をアップする効果があります。
これは、緑青に酸素を通しにくくする効果があるため、腐食を防ぐことができるからです。
金属は酸素や水と結びつくと腐食します。
逆に金属の表面に酸素や水を寄せ付けないものがあると腐食しにくくなるのです。
サビにくいといわれるステンレスは表面に皮膜を作り、外からの影響を受けにくい性質をもっています。
同じように緑青は銅の表面に酸素を通さない皮膜となり、内部の腐食を防いでいるのです。
緑青の色の美しさ
緑青の色の美しさから、古美術品や建造物の経年変化の魅力を生み出しています。
緑青は銅合金の塗料としても利用されるほど、外観を良くするものとして利用されています。
加工性や耐久性の高さから銅像をはじめ、寺社仏閣の屋根にも銅が使用されることが多いです。
銅が長い年月をかけて緑青色に変化した姿は時間の流れを感じさせ、訪れる人々の目を楽しませています。
緑青のデメリット
これまでは緑青のメリットを説明してきましたが、発生する場所によってはデメリットとなる場合があります。
なぜなら、身の回りの衣類や水回りの銅製品で起きる場合、「汚れ」となってしまうからです。
緑青がそのような場所で発生した場合、どのような不具合が起きるのでしょうか。
ひとつずつ見ていきましょう。
他の物に色移りしてしまう
緑青は衣服や他の素材に触れると色移りする場合があります。
銅を含んだ金具が衣類のボタンや靴のハトメ(靴ひもの穴の金具)に使用され緑青を発生させると、金具に接している部分に緑青の色素が移りシミになってしまいます。
緑青は水に強い性質があり、ほかの物に色移りしてしまうと落としにくいです。
ですので、緑青を発生させないようにすることが大事です。
そのために湿気が少ない所で保管し、濡れたときは水分を拭き取ることが大事です。
しかし、発生してしまった場合は後ほど紹介する簡単な落とし方を利用し、色移りする前に除去するようにしましょう。
水回りで発生すると清潔感がなくなる
身近な水道の蛇口で発生する緑青は、清潔感を損ないます。
水場で起きやすい緑青ですが、蛇口やキッチンまわりで起きてしまうと汚れているように見えてしまいます。
最近の蛇口はプラスチックにメッキ加工をするものが主流ですが、加工しやすい銅合金にメッキ加工をした物もあります。
使用し続けると徐々に傷が付きメッキがはがれ、銅合金は緑青を発生させます。
防ぐにはメッキがはがれないようにするしかありません。
そのためには、傷がつかないように扱うこと、掃除する際に硬いブラシでゴシゴシ擦らないようにすることが大事です。
掃除の方法は柔らかいスポンジで弱酸性の住宅用洗剤を水で薄めて行うのがベストです。
緑青が発生した場合は、業者に頼んで再度メッキ加工を施してもらうか、別の蛇口にとりかえるしかありません。
メッキがはがれないように使用することが重要です。
緑青の簡単な落とし方
緑青が発生した時汚れていると感じる場合は、簡単に落とせる3つの方法を紹介します。
ご自身の状況に合った方法を選択すれば問題なく緑青を落とすことができます。
ぜひ、参考にしてみてください。
お酢と塩を使って落とす
最初に紹介するのは、お酢と塩を使って緑青を分解させて落とす方法です。
お酢の成分が銅のサビを溶かす効果があり、お酢に塩を足すとさらにその効果が強くなります。
手順を紹介します。
①お酢と塩を1:1で混ぜ、塩が完全に溶けるまでかき混ぜます。
②混ざったら液体を布につけて、拭いて落とすだけです。
つけ込むことができるものであれば、そちらの方が効果的に落とすことができます。
③最後にお酢のにおいを落とすために中性洗剤で洗って乾かせば完了です。
この方法が適しているのは擦って傷をつけずに落としたい場合に有効です。
混ぜた液体は他の素材に付着するとダメージを与える場合があるので、緑青が付いたもの以外には付かないようにしてください。
まずは目立たない部分で試すと安全です。
重曹と水を使って落とす
重曹と水を混ぜてペースト状にしてスポンジで擦り落とす方法があります。
重曹には研磨剤と同じ効果があり、粒子が細かいため傷をあまりつけずに削り落とすことができます。
重曹と水を(重曹4:水1)の割合でまぜてペーストを作り、スポンジで磨けば簡単に落とすことができます。
磨いた後は水で流して、水分を拭き取りしっかり乾燥させましょう。
この方法は研磨して落とす方法でも問題ない場合や、お酢を使った方法でにおいが付くのが嫌な場合にこちらの方法がおすすめです。
緑青落とし剤を使用する
上記の2つの方法ではなく市販の物のほうが安全だと思う方には専用の緑青落とし剤を紹介します。
モリヤの「銅・しんちゅう・配管専用緑青落としミラクル酸」という商品です。
下記のサイトで税込990円で販売されています。
商品:商品サイトはこちら
こちらの商品を古い歯ブラシや布につけて磨くだけで簡単に落とすことができます。
お酢のにおいが付いたり、重曹ではちょっと効果に不安があるという場合におすすめです。
緑青を防ぐ方法
緑青を完全に防ぐことは難しく、発生しないようにするには銅が含まれた製品を湿気がない場所で管理することが重要です。
緑青の付着を抑える場合は水分からなるべく遠ざけることや、4章で紹介した緑青の簡単な落とし方を利用して、定期的にサビを落とすことが適切な方法です。
緑青の対策をして銅製品で楽しく料理
緑青が発生する銅製品がさまざまな分野で使われているのは、銅が金属として非常に便利だからです。
ここでは銅の便利さについて、プロも愛用する「銅鍋」を例にして紹介していきます。
上記で挙げたような緑青のデメリットがあるにも関わらず、プロは銅鍋を愛用するほどの機能性を説明していきます。
上記で述べた緑青の対策ができれば、気兼ねなく銅製品を生活に取り入れることができます。
銅製品の購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
プロが認める熱伝導率
銅鍋のメリットは熱伝導率が高く、食材に対して均一に熱が伝わるところです。
銅鍋は熱が鍋全体にすばやく伝わり、低い火力でも調理できるため焦げ付かずに料理が美しく仕上がります。
実はとても火力調整がしやすい鍋なのです。
その証拠として、卵焼きの専門店が使用する鍋には焦げ付きにくい銅が使われています。
他にもフランス料理をはじめヨーロッパの料理では銅鍋が使用されることが多いです。
煮込み料理の際に熱が早く通り、ソースを作る時は焦げ付かずに煮詰めることができます。
銅鍋は効率的に調理を行いたいプロに愛用されています。
料理が鮮やかに仕上がる
銅鍋には色止め効果があり、野菜をゆでると色鮮やかに仕上がります。
銅鍋から水に溶け出す「銅イオン」には野菜の色が退色するのを防ぐ効果があり、ゆでた野菜がきれいに仕上がります。
下ごしらえで湯通しする際に銅鍋を利用すると、いつも以上に料理をきれいに仕上げることができます。
銅の抗菌効果
銅には抗菌効果があり、O-157をはじめとするさまざまなウイルスの繁殖を防ぐ機能があります。
上記でも紹介した銅イオンには抗菌作用があり、ウイルスの活性化を防ぐことが実験で証明されています。
O-157が培養された寒天の上に銅のプレートを置いたところ、プレートのまわりにはウイルスが寄り付かなかったという結果が得られています。
まとめ
緑青は銅に発生するサビであり、さまざまな特徴があることを説明してきました。
緑青に害はなく、必要であれば簡単に落とせることが理解できたと思います。
緑青がどのような物かわからず、銅製品のメンテナンス性を低下させ、デメリットであると考えている方の誤解が解けたと思います
銅製品がさまざまな分野で活用されている事実から、緑青の影響より銅を使用するメリットの方が上回ることが明らかになりました。
緑青が原因で銅製品をとりいれることをためらっている方はこの記事を参考に、銅製品を選んでみてはいかがでしょうか。