真鍮(しんちゅう)とは銅と亜鉛を溶かして混ぜた金属(合金)のことです。
ブラスとも呼ばれ、五円玉や金管楽器など幅広い分野で使われています。
これは真鍮が熱を加えることによって薄く引き延ばしたり(展延性)、削りやすい(切削加工)からだと言えます。
さらに、真鍮は美しい黄金色をしているのでアクセサリーや革製品、小物などファッションに関するものにも多く使用されています。
真鍮は経年変化(色などの変化)を起こして、よりアンティークな風合いに変わるので愛着が沸き長く愛用する人が多いのです。
この記事ではそんな「真鍮」の種類や特徴などについて詳しく解説していきます。
真鍮(しんちゅう)とは?
まずは真鍮がどんな金属なのか紹介していきます。
真鍮は本当に身近な金属で至るところで使われています。
五円玉や金管楽器だけではなく、時計のパーツやアクセサリー、コンセントなどにも使用されているほど。
つまり、それほど高価ではなく使い勝手が良い人気の金属なのです。
銅と亜鉛の合金のこと
真鍮は銅と亜鉛を溶かして混ぜ合わせた合金のことです。
その含有量によって真鍮の色も変わります。
亜鉛の含有量が少ないと赤みが強くなり、含有量が多くなるにつれて薄くなるのです。
画像を見てわかるように亜鉛の含有量が多いと、より黄金色に近いことがわかります。
また、亜鉛の含有量が多いほど硬度が増して頑丈になりますが、含有量が45%を越えると逆に脆くなってしまいます。
真鍮は銅と亜鉛の含有量によってさらに3つの種類に分類されるので、この後の「真鍮は3つの種類に分かれている」で詳しく解説します。
金や銀に比べて安価な金属
真鍮は美しい黄金色をしていて人気の高い金属ですが、金や銀に比べるとかなり安価です。
金属名 | 価格(1gあたり) |
金 | 7928円 |
銀 | 106円 |
真鍮 | 0.75円 |
安価なことで個人でも手に入れやすく、自分で加工してアクセサリーを作る人もいるほどです。
日本では江戸時代から使われてきた
日本では江戸時代の中期(18世紀ころ)から真鍮が使われていたと言われています。
ただしそれも不明確で正確にはわかっていないとのこと。
17世紀ごろにオランダ貿易によって亜鉛が輸入されていたことがわかっているので、真鍮製造を行う環境は整っていたのでは?と推測されています。
正確にはわかっていませんが日本では300年ほど前から使われていることになります。
※参考資料:近世日本における真鍮製造と鋳造技術
真鍮は3つの種類に分かれている
真鍮は銅と亜鉛の含有量によって3つの種類に分類されます。
呼び方 | 含有量 |
丹銅 | 銅80%~95%、亜鉛5%~20% |
黄銅 | 銅60%70%、亜鉛30%~40% |
快削黄銅 | 銅60%前後、鉛数%、鉄数%、残りが亜鉛 |
それぞれどういった金属なのか解説します。
丹銅
丹銅は亜鉛の含有量が少なく、赤みが強い黄金色の真鍮です。
展延性(引き伸ばし)や絞り加工(プレス加工)、耐食性(腐食しにくい)に優れていて建材や金管楽器によく用いられます。
その赤みがかった色からレッドブラスやゴールドブラスとも呼ばれています。
黄銅
黄銅は亜鉛の比率が35%と丹銅に比べて多く、柔らかすぎず硬すぎない硬度を持っています。
さらに融点が比較的低く鋳造がしやすいので、私たちの身近で最も使用されている真鍮だと言えます。
物に当たっても火花が出ないので、昔から火気厳禁である場所で良く使われている真鍮です。(弾薬の薬莢や精密機械など)
快削黄銅
快削黄銅は黄銅に鉛や鉄が加えられた真鍮のことです。
鉛を加えることで切削加工(削る加工)がしやすくなり、切り屑も簡単に切り離すことができます。
そのため歯車やねじなどの繊細な加工を必要とするものに使われています。
殺菌効果も高いのでドアノブや人の手に触れるところに覆うために用いられます。
真鍮とメッキの違い
真鍮に似たもので「メッキ」があります。
メッキも真鍮と同じく黄金色をしていて、真鍮よりもたくさんの商品に使用されています。
真鍮とメッキの大きな違いは「色が剥がれて中身が露出するかどうか」です。
メッキは鉄などの素材にゴールドなどを薄く塗って、本物の金のように見せかけたものです。
薄く塗っただけなので劣化するとともに剥がれ落ちて、中身の鉄やアルミが露出してしまいます。
一方、真鍮は正真正銘の黄金色の金属なので、劣化によって中身が露出するなんてことはありません。
そのため、メンテナンスを行えば長く愛着を持てる金属になります。
※経年変化で色の変化が起こりますが、後ほど「経年変化する」で詳しく解説します。
真鍮の7つの特徴
ここからは真鍮の7つの特徴について紹介していきます。
中でも魅力的なのは黄金色で美しく、尚且つ経年変化を起こして多種多様な顔を見せてくれることです。
これはメッキだと起きない現象なので、真鍮特有だと言えます。
黄金色で美しい
真鍮は金にも似た黄金色をしています。
その美しさからインテリアやアクセサリーなどに使われていて、真鍮のファンも数多くいます。
さらに言えば、真鍮は上質感のあるアンティークな雰囲気があり、真鍮に似せたアンティーク風のメッキがあるほどです。
経年変化する
真鍮は経年変化という、時が経つにつれて色合いが変化する現象が起きます。
経年変化は、真鍮が空気に触れて酸化したり汗などの水分で錆びたりすることによって起こります。
この経年変化が真鍮に数多くのファンがいる要因です。
人によっては「汚れ」だと感じることもありますが、経年変化をいわゆる「味」として楽しむのが「真鍮」だとも言えます。
経年変化を起こした真鍮は革製品と色の相性が抜群で、よく金具として使われています。
殺菌作用がある
真鍮に含まれている銅には殺菌作用があります。
米国環境保護庁(EPA)というアメリカの政府機関では、銅合金(真鍮もこれに当たる)が細菌を死滅させるとして殺菌素材として登録されています。
ある実験の結果、数種類の細菌を99%死滅させるということもわかっています。
このようなことから、ドアノブなど人が触るところにも真鍮が使われることが多いです。
切削加工がしやすい
切削加工とは、工具で金属などを削ったり穴を空けたりする加工をすることです。
真鍮の中でも快削黄銅は切削しやすくなる鉛やビスマス(金属の一種)が含まれています。
鉛は潤滑性に優れていて、削る際の摩擦を防止するのとともに切り屑も切り離しやすくなります。
鉛が含まれていることで加工する際に金属へかかる力の大きさも少なくなるので、切削加工がしやすくなるのです。
このように切削加工しやすいのでボルトやナット、精密機械の部品などに使われています。
※参考文献:鉛入り黄銅の被削性におよぼす不純物の影響
薄く加工ができる
真鍮は展延性(薄く伸ばせる)が高く、薄く広げたり針金状に伸ばしたりできます。
この展延性は展性と延性の2つに分けられます。
展性はその金属の弾性の限度を越えた圧力や打撃でも破壊されずに、薄く広げられる性質です。
また、延性とは素材が破壊されずに柔軟に変形することを指します。
真鍮はこの2つの展性と延性に優れているので、薄く引き延ばした加工をすることが可能です。
複雑な形状に加工しやすい
真鍮は熱に強く(熱間鍛造性)、熱を加えることで複雑な形状に加工する熱間鍛造加工が可能です。
熱間鍛造加工は金属が真っ赤になるまで熱を加えて柔らかくした状態でプレスすることで金属成形する金属の加工方法です。
真鍮は熱間鍛造加工によって様々な形状に変化させることできるので、作りが複雑なアクセサリーなどにも使われているんです。
電流が流れやすい
真鍮は電気伝導率が高いのでコネクターやケーブル、コンセントに活用されています。
電気伝導率とはその物質がどの程度電気を通すか数値化したものです。
金属名 | 電気伝導率 |
銀 | 105.7 |
銅 | 100 |
金 | 75.8 |
アルミニウム | 59.5 |
真鍮 | 26~43(銅の含有量による) |
こう見てみるとあまり電気伝導率は高くないようにも見えますが、銀をそのまま使うのは費用的に現実的ではありません。
真鍮は電気伝導率がある程度高く、しかも安くて加工しやすいので様々な用途で使われていると言えます。
真鍮のデメリット
真鍮は加工がしやすく、しかも長く使える金属なので様々なところで使われています。
一方で水には弱くメンテナンスを怠ると錆びてしまう欠点もあります。
さらに言えば金属なのでアクセサリーだと金属アレルギーが出ることも。
メンテナンスを怠ると錆びる
真鍮は腐食には強いですが、空気に触れて酸化してしまうので徐々に黒みを帯びていきます。
酸化が進みすぎると黒く汚れたように見えてしまったり、水や汗によって緑青(ろくしょう)という緑色の錆びができてしまったりもします。
メッキだとこのような現象は起きませんので、真鍮よりもメッキが世の中に出回っているとも言えます。
ただし、メンテナンスを行えば通常の美しい黄金色に戻せるのでご安心ください。
※メンテナンス方法については「真鍮のお手入れ方法」をタップしてください。
金属アレルギーの反応が出る
真鍮は銅と亜鉛の合金なので、金属アレルギーをお持ちの方はアレルギー反応が出る可能性があります。
例えば、真鍮のアクセサリーは特にアレルギー反応を感じやすいでしょう。
アクセサリーをつけているとどうしても手垢が付いたり、汗が付着したりします。
そうすると先ほどお話した「緑青(ろくしょう)」という錆びが出てしまいます。
この緑青が金属アレルギーの原因です。
金属アレルギーは金属から溶けだした「金属イオン」に反応して起こります。
緑青は真鍮から溶けだした金属イオンなので、アレルギー反応が起きてしまうのです。
金属アレルギーをお持ちの方は注意しましょう。
※緑青について詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてみてください。
>> 緑青ってサビなの?銅に緑青が発生する理由と簡単に落とす方法とは?
真鍮のお手入れ方法
ここでは真鍮のお手入れ方法について解説していきます。
真鍮は空気に触れたり汗に触れたりすることで、経年変化を起こします。
しかし、ただ放っておくだけだと黒ずんで汚れて見えてしまうことも。
真鍮のお手入れは簡単なので、気になる人は試してみてください。
湿度の高いところで保管しない
真鍮は通気性が良く、湿度が低いところで保管しましょう。
真鍮は空気中の水分(湿度)に弱く、放っておくと表面の酸化が進んでしまいます。
そうすると緑青、要するに錆びが出てしまいます。
また、保管する際には布で真鍮についた水分を拭き取ってからにしてください。
金属用のクリームで磨く
真鍮がもし錆びてきたり、黒ずんできたりしたら金属用のクリームで磨くと錆びや黒ずみがとれます。
錆びや黒ずみも一種の経年変化で、その錆びを「味わい」として楽しむならこの方法は適していません。
もしあなたが錆びや黒ずみを嫌だな、と感じるならクリームで磨いて汚れを取り除きましょう。