革製品にこだわる方なら、「シボ革」という言葉を聞いたことがあると思います。
シボ革は耐久性の高さと独特の風合いからさまざまな革製品に使用されており、革好きの方たちから好まれています。
しかしシボ革という言葉や製品を見たことがあっても、製法や素材の魅力についてくわしく知っている方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は革好きがこだわるシボ革の特徴や、メリットとデメリットを解説します。
この記事を見て革の表情の違いや魅力を理解すれば、今までよりワンランク上のアイテム選びができるようになります。
後半におすすめのシボ革の革靴も紹介するので、ぜひ最後まで見てみてください。
革好きがこだわる「シボ」とは
シボ革の「シボ」とは凹凸状のシワのことで、革の表面に凹凸状のシワがある革のことを「シボ革」または「グレインレザー」と呼びます。
天然の革にある凹凸状のシワのこともシボと呼びますが、加工して人工的に作り出すことも可能です。
それぞれの違いについて確認していきましょう!
天然のシボ
天然のシボは元々あるシワのことを指します。
不規則なシワであるシボですが、天然のものはより個性豊かな形状になります。
天然にできているシボは革が伸縮することで作られ、革の繊維の密度や革の締まり具合、部位によって形状が異なります。
さらに個体によっても違いがあり、革の表情の違いを生み出す要素のひとつといえます。
人工のシボ
人工のシボは元々ないシワで後からつけたものです。
耐久性が上がり、独特の風合いが出ることで魅力が高まります。
一般的によく言われるシボがこちらになります。
そんなシボ革の製法は大きく4つあり、それぞれに大きな特徴があります。
次の章で紹介していますのでぜひ確認してみてください。
シボ革の製法
シボ革の製法には主に以下の4つがあります。
- 空打ち
- シュリンク
- 揉み革
- 型押し
それぞれについて解説していきます。
空打ち
空打ちは回転ドラムに革を入れて撹拌(かくはん)することでシワを付ける手法です。
洗濯機にTシャツを入れてシワが付くのを想像してもらうとわかりやすいかもしれません。
空打ちで仕上げられたシボ革は、ほぐされて柔らかく自然な風合いになります。
空打ちの代表的な革でイタリアの「ミネルバボックスレザー」があり、深い色合いの経年変化が楽しめることから多くの革好きの方に愛されています。
>> 札幌革職人館が取り扱っているミネルバボックスレザーの商品はこちら
シュリンク
シュリンクは「収縮剤」と呼ばれる薬剤の効果を利用してシワを生み出す手法です。
シュリンクで仕上げられたシボ革は、収縮剤の強さによってもシワの密度が変わるので、凸凹は均等にはならず、革自体が縮んでいるためシボの目が細かくなります。
※シュリンクレザーについて詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてみてください。
>> 革職人が教えるシュリンクレザーの魅力!4つの特徴もふまえて解説
揉み革
革を揉んでシボが生まれた革のことを「揉み革」と呼びます。
革を手で揉んだことから偶然生まれた製法で、作業効率を上げるために船底状の板である「ボーディングボード」の上から揉む製法に変わったことから、海外では「Boarded Leather」とも呼ばれています。
現在では機械式の製法が主流であり、効率も悪いため、あまり用いられない製法です。
型押し
型押しは革をプレス機で熱と圧力をかけることで、シボを生み出す製法です。
型押しは作業効率が高く、上記の製法では加工できない「ガラス張り革」や「エナメル革」といった革にも施すことができるのが特徴です。
※型押しについて詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてみてください。
>> エンボス加工とは?特徴からメリットデメリットまで完全解説
シボ革のメリット
シボ革の主なメリットは以下です。
- 耐久性が増す
- 見た目の割には軽量
- 独自の経年変化が楽しめる
それぞれについて解説していきます。
耐久性が増す
シボ革は耐久性が高いという特徴があります。
シボ加工された革は加工前より収縮しているため、密度が高くなっており強度が増します。
さらに表面の細かいシワは、外部の物と擦れても接触する面積が少なくなる効果を生むため、表面に傷が付きにくいです。
見た目の割には軽量
シワがあり密度が高そうに見えることから重量感を感じ人もいますが、実際に持ってみると軽さを感じることができます。
シボ革を利用すれば、重厚感がありながらも、使い勝手の良い製品に仕上がります。
独自の経年変化が楽しめる
部位ごとの特徴や加工される状態の違いにより、革の表情の変化に違いが生まれるという特徴もあります。
同じシボ革を使用した製品でも表面の状態が異なり、独自の経年変化が楽しめます。
シボ革のデメリット
以下のシボ革のデメリットについて解説します。
- イメージと違う場合がある
- 人によって好みがわかれる
- 安っぽく見えてしまうものがある
イメージと違う場合がある
同じシボ革の商品でも革の表情が変わる物もあるため、実際の商品を手にした時にイメージと違うと感じてしまうことがあります。
革表面の細部までこだわりがあり、全く同じものが欲しいという場合に、シボ革の表情の違いがデメリットとなってしまいます。
購入の際は実際の商品を確認した方が、失敗を防げるはずです。
人によって好みがわかれる
明確なデメリットではありませんが、シボ革ならではの凹凸感やシワが人によっては好みではない場合があります。
好みが分かれるのは、素材として個性が強いからともいえるかもしれません。
安っぽく見えてしまうものがある
シボ革の商品は、その独特の質感から物によっては合皮と間違われて安っぽくみえてしまう場合があります。
実際に当店でも、お客様がシボ革の商品をみて「これ合皮?」といわれることがよくあります。
せっかく本革の物を購入したのに合皮と間違えられてがっかりしたくない、という場合は避けた方が良いかもしれません。
おすすめのシボ革の靴5選
ここからは以下のシボ革のおすすめ革靴を紹介します。
- Church’s ソフトグレインレザー ダービー バーント
- ALDEN N1506
- Crockett & Jones DENVER
- PARABOOT WILLIAM / GR EBENE
- SANDERS 2609 BMG BUTT SEAM LOAFER
革靴にこだわりがある方におすすめの商品ばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。
Church’s ソフトグレインレザー ダービー バーント
1970年に登場したブランドの定番モデルで、控えめなシボ感のソフトグレインレザーを使用した外羽根式のレースアップシューズです。
地面にグリップする凹凸のあるラバーソールを採用し、軽やかな履き心地を実現しています。
価格:176,000円
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ALDEN N1506
グラントラストと呼ばれる木型を使用して作られた、丸みがありながらもすっきりとしたフォルムが特徴の一足。
レザーは光沢と強いシボ感が特徴的なアルパイングレインカーフを採用し、美しさに加えて、キズや汚れの目立ちにくい実用性も兼ね備えています。
価格:133,100円(税込)
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Crockett & Jones DENVER
甲前部がステッチで囲われたエプロンがあるエプロンフロントダービーシューズです。
しっかりとしたシボ感のあるスコッチグレインレザーをアッパーに採用し、ソールには軽量なラバーソールを組み合わせて、軽い履き心地に仕上げています。
価格:115,500円(税込)
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PARABOOT WILLIAM / GR EBENE
ラバーソールを採用しエレガントなダブルモンクストラップでありながら、丸みを帯びたカジュアルな雰囲気に仕上げた一足。
ツヤのあるグレインレザーが味わい深い雰囲気を醸し出しています。
価格:96,800円
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SANDERS 2609 BMG BUTT SEAM LOAFER
上品なシボ感のグレインレザーを使用したローファーです。
ソールはリッジウェイソールと呼ばれる複雑なパターンを持ったソールを採用し、悪天候や長時間の着用にも対応できる仕様となっています。
価格:63,800円
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シボ革の手入れ方法
シボ革のお手入れに必要な物や、手順について解説します。
シボ革のお手入れに必要な物
シボ革のお手入れに必要な物は以下です。
すべて札幌革職人館で揃えられるので、興味がある方はぜひ利用してみてください。
>> 札幌革職人館はこちら
お手入れの手順
シボ革のお手入れの手順を以下に紹介します。
- 馬毛ブラシでブラッシングをして、表面の汚れを払い落とす
- レザークリームを塗る
- シボの溝部分にクリームが溜まらないように再度ブラッシング
- 仕上げ用クロスで拭き上げて完成
シボ革は表面に凹凸があり溝となる部分に細かな埃や汚れ、クリームが溜まりやすいためブラッシングをしっかり行うことがポイントです。
※お手入れについて詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてみてください。
>> 革専門店が教える!革製品を長く愛用するための正しい手入れ方法とは
まとめ
シボ革は独特のシワがあり、部位や加工方法によってさまざまな表情の違いがあります。
独特のエイジングが楽しめる上に耐久性が高く、革靴の素材として適している素材です。
シボ革はスーツと合わせるようなフォーマルなデザインの靴や、カジュアルなスタイルでも利用できる靴まで利用されており、汎用性が高い素材であることがわかります。
シボ革の革靴を探している方は、この記事を参考にシボ革の魅力を理解して選んでみてください。